本命不在の戦国時代
保木&小林が日本人初Vをめざす
*世界ランキングは7月10日付
昨年末、キレある攻撃を武器にファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルディアント(インドネシア)が世界ランキング1位に到達すると、一度もその座を明け渡すことなく、7月を迎えた。ツアーの上位常連で、今回の優勝筆頭候補だが、今季は全英オープン等の2勝に留まり、絶対的とはいえない。王座はトップ10ならどのペアにもチャンスがある状況だ。
日本の保木&小林は準々決勝が最初の山場か
もちろん、日本のエース保木卓朗/小林優吾にも勝機がある。昨年9月、世界ランキング1位に就くも優勝が遠く、12月にその座を明け渡した。しかし、先月のシンガポールオープンで1年ぶりのツアー優勝を果たし、苦しい時期を抜けた。
そんな2人の最初の難所は、アーロン・チア/ソー・ウィイック(マレーシア)との準々決勝になりそう。昨年の世界選手権で日本のバドミントンファンを沸かせた脅威のレシーバーだが、保木/小林は5勝2敗と相性がよく、着実にポイントを重ねたいところだ。
日本のエースが準決勝で当たりそうな相手を占うのは難しいが、世界ランキングで見れば、中国の新星で22歳の王昶(ワン・チャン)/梁偉鏗(リャン・ウェイケン)か。昨年この大会で、国際大会5回目の出場にしてワールドツアー初優勝を遂げ、一気に名を広めた。躍進のきっかけとなったこの日本でふたたび勝ちたい気持ちは強いだろう。
ただ、この新鋭も準々決勝で193センチ&189センチの劉雨辰(リュウ・ユチェン)/欧烜屹(オウ・シュアンイ)というチームメイトと激突しそうで、気を抜けない。手の内を知り合うだけに、激しい打ち合いになるはずだ。
上り調子のインドペアもV候補
一方、保木/小林と反対側の山で、存在感を増しているのは、世界ランキング3位のサトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティ(インド)だ。インドの男子ダブルスで、初めて世界トップ10入りし、6月のインドネシアオープン優勝と勢いが止まらない。Super1000での初優勝だっただけに、飛び上がって喜んでいたのが印象的だった。
強打だけでなく、ネット前への返球もうまい2人は、準々決勝で当たりそうな世界ランキング6位のオン・ヨーシン/ティオ・エーイ(マレーシア)を下して、そのまま優勝の栄冠をさらっていくかもしれない。
個性豊かなインドネシアやデンマークペアのプレーに注目
大会には、バドミントン愛好者に見てほしい極上のプレーを魅せるペアがあふれている。その筆頭が38歳&35歳で世界の最前線に立ち続け、インドネシアでは「グレイト・ダディーズ(偉大な父たち)」と呼ばれるヘンドラ・セティアワン/モハマド・アッサンだ。神がかり的なレシーブで勝ち進む姿をぜひ会場で見届けてほしい。
また、アジア勢が席巻するバドミントン界で、世界トップ10と渡り合うアンダース・スカールプ・ラスムセン/キム・アストルプ(デンマーク)の気持ちのこもったスマッシュが必見だ。長丁場にめっぽう強いチェ・ソルギュ/キム・ワンホ、キム・キジュン/キム・サランという昨年3位の韓国勢も粘りも魅力的だ。
なお、日本からはベテランの古賀輝/齋藤太一と、社会人1年目の武井優太/遠藤彩斗も登場。古賀/齋藤は、7月上旬のカナダオープンで保木/小林を破ったことを自信に上位進出を目指す。2028年ロサンゼルス五輪の出場という夢を持つ武井/遠藤は、実現に向かって一つでも多く勝ちに行く。
『PHOTO:BADMINTON PHOTO』
2022年大会(第39回)結果 | |
優勝 | 王昶(ワン・チャン)/梁偉鏗(リャン・ウェイケン)(中国) |
準優勝 | アンダース・スカールプ・ラスムセン/キム・アストルプ(デンマーク) |
3位 | チェ・ソルギュ/キム・ワンホ(韓国) |
3位 | キム・キジュン/キム・サラン(韓国) |