7/28(金)各種目準々決勝
男子シングルス
ラクシャ・セン(インド) 2(21-15、21-19)0 渡邉航貴(BIPROGY)
1回戦、2回戦と好試合で勝ち上がってきた渡邉航貴が、本日はインドの若き精鋭であるラクシャ・センと対戦。ラクシャ・センは今月初めに行われたカナダオープンで1年半ぶりのツアー優勝を果たし、調子を上げてきている。身長差13cmの対決で、日本のスピードスターがどのように崩していくのかが注目された。
第1ゲーム、序盤の探り合いから徐々に抜け出していったのはラクシャ・セン。長いリーチを活かした速いタッチと、ラウンドからの強力なクロススマッシュは、ラリーの要所で渡邉を苦しめる。相手を動かして勝機を見出したい渡邉だったが、相手のディフェンスも堅く、後半には連続得点をあげることすらできず、このゲームをラクシャ・センが21-15で奪取する。
第2ゲーム、渡邉は「レシーブには自信を持つことが出来て、シャトルスピードにも対応出来て身体も動いてきて手ごたえがあった」というとおり、相手の強打に正確に面を合わせてレシーブしてリターンエースを決めたり、甘く誘ったところをトップスピードで詰めて決めるなど、真骨頂のプレーが多く出て、序盤から飛び出して優位に進めていく。そのまま取り返すと思われたが、14-6と渡邉リードの場面から様相が変化する。ラクシャ・センはスピードを上げて攻勢を強め、一気に追い上げを見せる。「相手のミスを誘おうと判断してプレーした結果、全く攻撃的な展開が出来ず、本当に不甲斐ない試合になってしまった」と試合後に振り返ったとおり、渡邉はスピードを活かした攻めのプレーが鳴りを潜め、19-21で悔しい敗戦となった。
同じくこの種目の準々決勝を戦った奈良岡功大(FWDグループホールディングスリミテッド)は、中国のエース、シー・ユーチーと対戦。双方に大きな声援が鳴り響く81分に及ぶ大熱戦の末、11-21、21-19、21-14と勝ち切って準決勝進出を決めている。
女子シングルス
アン・セヨン(韓国) 2(21-19、21-10)0 ラチャノック・インタノン(タイ)
今年既に6つのトーナメントで優勝、3つの準優勝、決勝まで進めなかったのは1大会のみと、無類の強さを発揮しているアン・セヨン(韓国)が登場。対するのは、実に11年以上も世界ランキング10位以内を保っているタイの至宝 ラチャノック・インタノン。この対戦はアン・セヨンが4連勝中であり、ラチャノックの逆襲が期待された。
第1ゲーム、共に正確無比なショットを打ち込み、コートを大きく使ったラリーを厭わず進めていく。再現性の高いショット、トラベリングで正確さが上回ったアン・セヨンがやや先行しつつも、ラチャノックもクロスのスライスショット、ヘアピンを鋭く切り込んで得点につなげていき、一進一退のラリーが続く。終盤に均衡を破ったのはアン・セヨンだった。徐々に相手のクロス配球に対応し、高い位置で返球する場面を増やしていくと、次の甘い球をミドルコートから確実に沈めて20-16とする。少し緩めたのか、ここから失点をしたが、流れまでは渡すことなく21-19でゲームを先取した。
第2ゲームに入ると、インタノンは持ち前の伸びやかでシャープなストロークで、クリアとスマッシュを巧みに打ち分け、9-5とリードを奪う。しかし、ここからアン・セヨンはスピードアップして相手のウイニングショットをことごとく封じていく。極限のラリーでより厳しいコース、ショットという意識が浮かんだのか、ラチャノックにミスが散見されると、アン・セヨンが畳みかけて一方的な展開に持ち込む。その間の失点はわずかに1と、アン・セヨンが21-10として圧倒的な勝利を掴み、勝利の瞬間には渾身のガッツポーズで昂った感情を表現した。
本日行われた最後の試合で予期せぬ波乱が起こった。
ジャパンオープン3連覇のかかる世界ランキング1位の山口茜(再春館製薬所)は、インドネシアのグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンと対戦。「低い展開に強い相手なので、大きく回していこうと思ったが、今日の相手は上からのショットがよく、上手く試合をつくれなかった」という山口は、シャトルコントロールに苦しみ、第1ゲームを11-21で落とす。
第2ゲームは自由度の高いプレーも発揮され、21-11で取り返す。迎えたファイナルゲームは序盤から相手にリードを許す苦しい展開が続く。「相手の上からのショットや大きな配球が良かったのに対して、今日は点数を取れると自信を持てる、核となるプレーが定まらなかった」と試合後に語ったように、最後まで苦しいラリーを強いられた山口。最後までライン際に鋭いスマッシュ、スライスショット沈めたグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンが21-18で押し切った。
敗れた山口だが、「またいいプレーが出来るようにしっかり練習をして、リフレッシュもして、次の世界選手権に切り替えたい。」と次の目標を明確に語った。
男子ダブルス
保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸) 2(10-21、21-15、21-16)1 アーロン・チア/ソー・ウィイック(マレーシア)
世界ランキング5位の保木/小林は昨年東京で開催された世界選手権優勝のアーロン・チア/ソー・ウィイックとの対戦に臨んだ。
第1ゲームの序盤は両者点の取り合いとなった。保木/小林は得意の低空戦で得点を奪うが、それに対するマレーシアペアの緩急をつけた球回しでリードされ、前半を5-11で折り返す。後半も保木/小林は攻めのスタイルを作れず苦しい展開でミスを重ねてしまう。最初の流れのままゲームを進めたマレーシアペアに10-21でこのゲームを奪われた。
第2ゲームの序盤は変わらずマレーシアペアのペースだが、徐々に小林がスマッシュを打ち、保木が前で決めるという形で点数を重ね、流れを引き込もうと執念を見せて、前半を9-11で折り返す。リズムをつかみ始めた保木/小林がサービス周りでも集中力を高め、7連続ポイントで21-15としてファイナルゲームへ勝負を持ち込んだ。
迎えたファイナルゲーム、目まぐるしく攻守の入れ替わるラリーで両者得点を重ねるが、第2ゲームの勢いのまま保木/小林が11-7で折り返す。意地を見せたいマレーシアペアはペースを上げて、1点差まで詰め寄られるも、保木の積極的なネット前のプレーで連続得点で突き放し、21-16で保木/小林が準決勝への切符を手にした。
試合後、保木/小林は「1ゲーム目は苦しいゲーム展開だったが、2ゲーム目と3ゲーム目は攻撃とサービス周りで持ち味を出すことができたのがよかった。次の対戦相手(中国のリュウ・ユチェン/オウ・シュアンイ)はスディルマンカップでやられた相手。その時は中国でやられたが、今回は日本で対戦なのでやり返せるように準備したい。」と意気込みを語った。
昨日の2回戦で中国1番手ペアを撃破した古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)は、連日の中国ペアとの対戦で、昨年のワールドツアーファイナルズ覇者 リュウ・ユチェン/オウ・シュアンイと対峙した。終始激しいラリーの応酬で、第1、第2ゲームをそれぞれ22-20、20-22で分けあった。迎えたファイナルゲームは、古賀/齋藤は相手の高速ドライブ、角度あるスマッシュにシャトルをコントロールしきれず、先行を許してしまう。7-13の場面では中国ペアの怒涛の攻撃に何度もスーパーレシーブを見せるなどし、歓声を一挙に集めたが、力及ばず。14-21で落とし、準々決勝で姿を消した。
女子ダブルス
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)2(21-19、21-12)0 志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)
昨年の全英オープンで優勝するなど最近目覚ましい成長を見せている志田千陽/松山奈未が、準々決勝で世界ランキング1位に君臨する中国のチェン・チンチェン/ジア・イーファンに挑んだ。過去の対戦成績では志田/松山が3勝6敗と負け越している。8月に行われる世界選手権や来年に控えるパリオリンピックに向けて、「自分たちの展開をつくってどこまで通用するかを知りたい(志田)」と志田/松山の戦いぶりが注目された。
第1ゲーム、2-2となるまでは1ラリーに何度も攻守が入れ替わる互角の立ち上がりを見せる。しかし、志田/松山は中国ペアの精度の高いロングサービスにタイミングを崩され、甘くなったところを強打で決められてしまい、リードを許す。何とか突き放されまいとする志田/松山だが、中国ペアのネット前での素早いタッチと後衛を揺さぶるカウンターに対して防戦一方の苦しい展開が多くなる。レシーブやロブでのエンドアウトも響き、6点リードを許したまま迎えた10-16の場面、「積極的な前への詰めがよかった」と志田が振り返ったように、驚異の7連続ポイントで一旦は逆転に成功するが、中国ペアの強打に押し切られてしまい19-21で第1ゲームを奪われてしまう。
第2ゲームに入ると、志田/松山は前衛のサイドを抜くドライブレシーブと中国ペアの前衛と後衛の間をつくハーフ球を随所で使い、攻撃の場面を増やしていく。この形がはまり5-3とリードを握ったが、中国ペアのサービスからの素早い反応・タッチで、前衛につかまり決められる展開が多くなり、5-8と逆転を許す。ここから巻き返したい志田/松山はハーフ球で攻撃の形へもっていこうとするも、中国ペアの対応力の高さ、巧みなショットの前に点差を縮めることができず、結局は12-21でゲーム。志田/松山はベスト8で今大会を去ることとなった。
試合後、相手の戦いぶりについて「ミスの少なさや、自分たちのタイミングをずらすことで攻撃の形をつくらせない配球は、流石だなと感じた」と志田が話せば、一方の松山は「自分たちの通用するところも確認できた」と手ごたえも感じていた。今大会で得た課題をバネにこれからも志田/松山の成長は続く。
混合ダブルス
デチャポン・プアヴァナクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)2(21-19、21-4)0 ソ・スンジェ/チェ・ユジュン(韓国)
昨年のジャパンオープン覇者であるタイのデチャポン/サプシリーが、左利き同士のペアである韓国のソ・スンジェ/チェ・ユジュンと対戦。世界ランキング3位と5位のペアの対決とあって、世界基準のプレー・鋭いショットの応酬で会場のバドミントンファンの興奮を駆り立てる試合が行われた。
第1ゲーム、デチャポン/サプシリーは強力なドライブリターンを駆使して、繰り広げられる高速の打ち合いを優位に進めていく。相手の当たり負けしない強気のラリーで14-9とリードを奪う。その後、韓国ペアもチェ・ユジュンの攻撃参加が増えたことで、スマッシュの連打で盛り返し、一時追いつく。しかし、今一度集中してサービス回りを固めたタイペアが21-19と逃げ切る。
第2ゲームは一方的な展開となった。デチャポン/サプシリーは男子ダブルスさながらの運動量を見せて猛攻を仕掛け、韓国ペアに全く付け入る隙を与えない。デチャポンは縦横無尽に跳躍し、放つスマッシュの威力はとどまることを知らない。サプシリーは相手のドライブリターンに反応してことごとく前衛で抑え込み、次々に沈めていく。タイペアの強さ光るプレーはどれも圧巻で、見るものを引き込み、点を追うごとに2人のプレーを称賛する会場の拍手も大きくなっていく。完璧にゲームを支配し、21-4で準決勝進出を決めた。
ほか、この種目の準々決勝を戦った渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)は、タイのスパク・ジョムコー/スピッサラ・パエサンプランと対戦。中盤以降、渡辺のスピード感あふれるプレーと東野の前さばきが冴えわたり、21-18、21-8で順調に準決勝進出を決めた。
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