試合レポート 大会5日目

7/29(土)各種目準決勝

男子シングルス
日本男子シングルス界の新星が帝王アクセルセンに挑む。

ビクター・アクセルセン(デンマーク) 2(21-11、21-11)0 奈良岡功大(FWDグループホールディングスリミテッド)

ビクター・アクセルセン(デンマーク)
ビクター・アクセルセン(デンマーク)

世界ランキング1位に堂々と君臨し、東京オリンピックでも金メダル、今大会もさすがの強さで勝ち上がりを見せているのがビクター・アクセルセン。その王者に挑むのが、’22ワールドツアーファイナルズ準決勝でアクセルセンと対戦し、激闘を繰り広げるなど、ここ1年で急成長を遂げている奈良岡功大。王者アクセルセンに対して、日本男子シングルス勢で唯一準決勝に駒を進めた奈良岡がどこまで食らいついていけるか注目された。

第1ゲーム序盤、アクセルセンは正確無比なクリア、ロブ、ヘアピンで奈良岡をコートの四隅に大きく揺さぶる。対する奈良岡はアクセルセンの足を止めるべく、ネット前へのカット、ヘアピンを軸にラリーを展開する。互角のストローク戦を繰り広げていると思われたが、「連戦の疲れで足を思うように動かせなかった」と語った奈良岡の奥へのショットが甘くなり始めると、アクセルセンはすかさず長身を生かしたスマッシュをコートに突き刺す。この展開が多くなり、徐々に点差を広げられてしまう。引き離されたくない奈良岡はタイミングをずらしたクリアを織り交ぜながらアクセルセンを崩そうと試みるが、ここで崩れないのがアクセルセン。奈良岡は1度もリードを奪えぬまま11-21で第1ゲームを奪われる。

奈良岡功大(日本)
奈良岡功大(日本)

第2ゲームに入ってからもアクセルセンに終始ペースを握られる。序盤、奈良岡は0-4からアクセルセンのサイドアウト、エンドアウトで4-4まで追いつく。ここで勢いに乗りたい奈良岡であったが、その期待も束の間。アクセルセンのサイドラインぎりぎりに打ち込まれるスマッシュに対して返球が甘くなり、前で決められる展開が多くなり、4-10と突き放される。その後もアクセルセンのアタック力の前に奈良岡の粘り強さは影を潜め、11-21でゲームセット。アクセルセンからの初勝利とはならなかった。

試合後、「カナダ、韓国でベスト4に入ってから今大会でもベスト4に入れたので調子は悪くない」と語った奈良岡だが、終盤に腰あたりの治療を受けており、連戦で相当疲れがたまっているようだった。いかに万全な状態でトーナメントを戦えるかが今後の鍵になってくるだろう。

応援を力に、我慢のプレーで勝ち取った勝利

ヨナタン・クリスティ(インドネシア)2(21-15、13-21、21-16)1ラクシャ・セン(インド)

ヨナタン・クリスティ(インドネシア)
ヨナタン・クリスティ(インドネシア)

世界ランキング9位のヨナタン・クリスティと世界ランキング13位のラクシャ・センが決勝の切符をかけて対戦した。準々決勝で、ヨナタン・クリスティは世界ランキング3位で勢いのあるタイの若手クンラブット・ヴィチットサーン、ラクシャ・センは日本の渡邉航貴(BIPROGY)をそれぞれストレートで下している。直近では、2023年1月のインドネシアマスターズでヨナタン・クリスティがファイナルゲームで勝利している。

第1ゲーム、ヨナタン・クリスティは、ロブショットが4本サイドアウトするなどショットが安定せず、4-7となる。一方のラクシャ・センにもクロスへのネット、スマッシュ、クリアが3連続でサイドアウトとなり主導権争いが過熱する。お互いにショットの精度を高めてから主導権を握ったのは、早いテンポの球回しで四隅にシャトルを散らしたヨナタン・クリスティ。11-12と追う場面で、これまでエースショットとして機能してきたラクシャ・センのラウンドからのクロススマッシュを、ヨナタン・クリスティがリターンするなどして5連続ポイントを奪うと、そこから自信にあふれたプレーで21-15として、このゲームを奪う。

ラクシャ・セン(インド)
ラクシャ・セン(インド)

第2ゲームに入ると、流れを変えたいラクシャ・センがトップスピードで強打を繰り出せば、ヨナタン・クリスティは出方を窺う。「相手が素早いので、忍耐強く我慢、落ち着くようにした」という戦略で臨んだというヨナタン・クリスティは、4本のミスショットを含む6連続ポイントを与えてしまい、追う展開になる。前半からのスピードを維持し、最後まで走り切ったラクシャ・センが21-13で奪い返す。

ファイナルゲームの序盤は点を取り合うも、ラクシャ・センのスマッシュを打った次のタッチに遅れが見え始める。ヨナタン・クリスティはこれを逃さずスピードを上げて4連続、3連続でポイントを奪い12-7として流れを引き寄せる。もう一段階テンポを高め、強打し続けたヨナタン・クリスティが21-16で68分の渡る死闘を制し、全身で喜びを表現し、コートに倒れ込んだ。

試合後、ヨナタン・クリスティは、「会場にきてくれた日本人のサポートがあって胸が熱くなった。明日も応援してほしい。」とにこやかに語った。一方のラクシャ・センは、「カナダオープン後、状態がよい。負けてしまったが、パフォーマンスはよかったし、良い学びになった。全て結実し始めている感覚があるので、世界選手権に向けてさらに上げていきたい。」と確かに手ごたえを話した。


女子シングルス
中国の誇るサウスポーとバドミントン王国の新星の決戦

ヘ・ビンジャオ(中国) 2(13-21、21-19、21-9)1 グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)

ヘ・ビンジャオ(中国)
ヘ・ビンジャオ(中国)

2016年ジャパンオープン優勝者で中国選手らしい安定した強さを誇るへ・ビンジャオが、今大会の優勝候補であった山口茜を準々決勝で破り、5年ぶりにSUPER750のグレードの準決勝を戦うグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンと対決した。

第1ゲーム序盤、「ここ2回の対戦で負けており、緊張があった」というヘ・ビンジャオは、思うようにシャトルがコントロールできない。対するグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンはフォア奥から強力なストレートスマッシュを決めていく。ラリーの主導権をグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンに握られ、フォア奥から放たれれる多彩なショットで徐々に点差を広げられてしまう。伸び伸びと持ち味を発揮するグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンに翻弄され、13-21で奪われてしまう。

グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)
グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)

迎えた第2ゲーム、シャトルコントロール、持ち味のキレあるショットをヘ・ビンジャオは取り戻し、一進一退の攻防となる。鋭いスマッシュ、ドリブンクリアなどの低い展開で、質の高いショットを繰り返すヘ・ビンジャオに対してグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンは線上への正確無比なショット、苦しい体勢でも打ち返すフィジカルの強さで対抗する。互いに1歩も引かない展開で20-19とへ・ビンジャオがゲームポイントを握る。グレゴリア・マリスカ・トゥンジュンが痛恨のサービスミスし、勝負の行方はファイナルゲームへともつれ込んだ。

勝負のファイナルゲーム、観客が固唾を飲んで見守る中、勝負に出たのはヘ・ビンジャオ。試合開始からおおよそ50分が経過しているのにも関わらず、ギアを上げて強打で畳み掛ける。一方のグレゴリア・マリスカ・トゥンジュンは、衰えない猛攻のプレッシャーにミスが目立つ。必死にレシーブで喰らいつくも、ヘ・ビンジャオの勢いがどんどん増していき、終わってみれば、21-9の大差で試合終了。

試合後、決勝を戦うアン・セヨン選手について、「とても強い選手なので、勉強する気持ちで臨みたい」とヘ・ビンジャオは謙虚に語った。

強すぎる21歳、アン・セヨンが新たなタイトル奪取へマジック1

アン・セヨン(韓国) 2(21-17、21-12)0 タイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)

アン・セヨン(韓国)
アン・セヨン(韓国)

目下破竹の勢いで世界ランキング1位が見えてきた21歳のアン・セヨン(韓国)が、先週行われた韓国オープン決勝で対戦したタイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)と、準決勝の舞台で顔を合わせた。トップランカー同士とあって、今年だけでも既に5度対戦しており、アン・セヨンが4勝1敗と勝ち越している。累計4年以上もの期間、世界ランキング1位の座にいた経験のあるタイ・ツーインとしては、何とかして勝利をつかみ取りたい一戦となった。

タイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)
タイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)

第1ゲーム、序盤はタイ・ツーインが持ち前のフィジカルを活かした鋭いショットでラリーをコントロールし、アン・セヨンのリズムを崩してミスを誘い、11-4と先行する。しかし、「最初焦ってしまったが、落ち着いて1点ずつ積み重ねていくと言い聞かせた。コーチからも同様の指示を受けたことで、気持ちを取り戻すことに集中できた」というアン・セヨンが、正確なショットを打ち分けて手堅いラリーを展開して一気に追い上げる。長いラリーを確実に制して流れを引き寄せたアン・セヨンは、早いタッチから甘い球を誘い、ミドルコートから次々にスマッシュを決めるなど、緩めることなく攻め切って21-17でゲームを奪った。

第2ゲームに入っても、アン・セヨンがゲームの支配を続ける。タイ・ツーインのサービス回りからリアコートへの低い球に対し、アン・セヨンは確実にシャトルの下に身体を入れて、上からのショットで攻勢を作り出していく。また、相手にはリアコートのバックハンドに追い込み、次の一打を素早く繰り出すことで一方的な展開を続け、18-7と大量リードを奪う。最終盤、タイ・ツーインはクロスのスライスショットを起点に好プレーを連発して、大歓声を味方につけるが、巻き返すには遅かった。最後はドロップを決めて21-12としたアン・セヨンが、実力者を退け、お馴染みの決勝戦進出を決めた。


男子ダブルス
逆襲ののろし、金メダリストが高速ラリーで現・世界ランキング1位をねじ伏せる

リー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ) 2(21-19、21-10)0 ファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルデイアント(インドネシア)

リー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ)
リー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ)

東京オリンピックでの金メダル獲得以降、苦しいトーナメントが続き、現在世界ランキング15位のリー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ)が、連日のファイナルゲームを制して勝ち上がってきた。この準決勝では世界ランキング1位のアルフィアン/アルディアント(インドネシア)への挑戦となった。

試合開始と同時に大きな声援が飛び交う、準決勝らしい雰囲気で幕を開けたこの試合、共にテンポの速い強力なアタックを仕掛けながら、先行していったのはリー・ヤン/ワン・チーリン。相手の強打に徹底したドライブリターンで対応し、一気に押し込んでいく展開を多く作り、16-9とリードを奪う。その後インドネシアペアも奥行き・高さを工夫した攻撃で追い上げるが、リー・ヤン/ワン・チーリンは相手コートをよく見た配球でかわし、21-19で逃げ切る。

ファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルデイアント(インドネシア)
ファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルデイアント(インドネシア)

ゲーム先取できたことで、さらに思い切りの良さが発揮されたリー・ヤン/ワン・チーリンは、続く第2ゲームでも強力なドライブで相手を振り切っていく。本来スピーディーな展開も得意なインドネシアペアだが、この試合では前衛で球を捕まえきれず、抜かれてしまう場面が散見される。全くスピードを緩めることなく攻め切ったチャイニーズ・タイペイペアが21-10と圧倒し、縁起のいい日本で久々の決勝進出を決めた。

会心の勝利、保木/小林が隙のないゲームメイクで決勝進出を決める

保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸) 2(21-10、21-15)0 リュウ・ユチェン/オウ・シュアンイ(中国)

保木卓朗/小林優吾(日本)
保木卓朗/小林優吾(日本)

昨日激戦を制した保木卓朗/小林優吾 は昨年のワールドツアーファイナルズで優勝した中国のリュウ・ユチェン/オウ・シュアンイと対戦した。このカードは昨年のスディルマンカップの再戦で、その際は中国ペアに軍配が上がった。今日の試合に向けて、「次の対戦相手はスディルマンカップでやられた相手。その時は中国でやられたが、今回は日本で対戦なのでやり返せるように準備したい」と話しており、保木/小林の戦いぶりが注目された。

第1ゲーム、序盤から保木/小林の持ち味である低い球回しや保木の素早いネット前プッシュでテンポよく得点を重ねる。対する中国ペアは長身から力強いスマッシュを繰り出すが、保木/小林のレシーブが堅く、思うようにポイントを重ねることが出来ない。まったく付け入る隙を与えることなく、このゲームを21-10で先取した。

リュウ・ユチェン/オウ・シュアンイ(中国)
リュウ・ユチェン/オウ・シュアンイ(中国)

第2ゲームも保木/小林の勢いが止まらない。何とか流れをつかみたい中国ペアも力みが目立ちミスを重ねるのに対し、小林の力強いスマッシュや、ドライブの応酬でも保木が決め切るなど、11-5で折り返す。終盤、中国ペアは5連続ポイントで20-15まで追い上げを見せるも、会場の拍手や応援の後押しもあり、保木/小林が21-15として、勝利の瞬間雄叫びとともに会心のガッツポーズを挙げた。

試合後、保木/小林は、「前回やられたことにより、今回はいい意味で開き直って試合をすることができた。最後詰め寄られる場面もあったが、会場の声援のおかげで押し切ることができた。」と語った。


女子ダブルス
息を飲む攻防。世界王者が立ちはだかる

チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)2(21-19、21-18)0 福島由紀/廣田彩花(丸杉)

チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)

世界ランキング6位の福島由紀/廣田彩花が世界ランキング1位のチェン・チンチェン/ジア・イーファンと対戦した。2015年の初対戦から20戦目(対戦成績は福島/廣田の10勝9敗)と世界トップの対戦に会場中が息を飲んだ。

第1ゲーム、中国のパワーを活かした強打で3連続ポイントを奪えば、福島/廣田はレシーブでチャンスを作る得意のパターンで3ポイントを奪い返す。お互いの良さを出し合うレベルの高い攻防で1点を争う展開で進む。11点から福島/廣田のシャトルへの執念が高まり、13-12として、ここまま行くかと思われたが、チェン・チンチェンの虚をつくドロップで主導権を握れない。逆に福島のスマッシュとネット前でのミスなどで3連続失点、14-16となる。一時は同点に追いつくも、最後は中国のパワーに押し切られ、19-21で中国に奪われてしまう。

福島由紀/廣田彩花(日本)
福島由紀/廣田彩花(日本)

第2ゲーム序盤、「噛み合ってなく、迷いがあった」と福島が振り返ったように、中国の猛攻に対してレシーブが安定せず、9連続ポイントで3-10と大きく離されてしまう。11点のインターバル後、徐々にいつものプレーを取り戻し、レシーブから攻めのパターンで10-12と2点差まで追い上げる。しかし、中国ペアはギアを上げ、後衛でジア・イーファン、前衛でチェン・チンチェンが立ちはだかり、引き離しにかかる。終盤は点を取り合うも、前半の点差が響き、最後はジア・イーファンがスマッシュを決めて18-21で中国が決勝進出を決めた。

試合後、福島は「廣田に球が集まっていくので、それをどう対応するのか、自分のレシーブのクオリティを高めていきたい」と次に向けての課題とともに、「ここのところ日本の大会に出られなかったので、出られてよかった。準決勝まで来れられたことはプラス」と手ごたえを話した。一方の中国ペアは、「(決勝で戦う韓国のキム・ソヨン/コン・ヒヨンについて、)強い相手、全力で戦いたい」と世界王者しての慢心はなかった。

最後まで自分たちの攻めるプレーを出し切れず、悔しい敗退

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国) 2(14-21、21-13、21-10)1 松本麻佑/永原和可那(北都銀行)

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)
キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)

松本麻佑/永原和可那は’18、‘19世界選手権優勝、’21全英オープン優勝、対する韓国のキム・ソヨン/コン・ヒヨンは東京オリンピック銅メダル、’19年ジャパンオープン優勝の実力者。松本/永原は参加した直近のインドネシア、カナダ、韓国でいずれもベスト4以上と安定した勝ち上がりを見せている。二人の長身を生かした高い攻撃力で、昨日の準々決勝に引き続き韓国勢に勝利となるか、注目の一戦となった。

第1ゲーム序盤から松本/永原の持ち前の攻撃力が火を吹く。レシーブに回った展開では前衛のサイドを抜く鋭いドライブレシーブから攻守を転換し、テンポよく後衛のスマッシュ、前衛のプッシュで韓国ペアのレシーブを打ち崩す。また永原のフォアハンドからのドライブサーブで低い展開のラリーを作り出すと、松本/永原がすかさず前に落として上げさせ、再びトップアンドバックの形から強力なスマッシュを打ち込む。結局韓国ペアに1度もリードを許すことなく、21-14で第1ゲームを先取する。

松本麻佑/永原和可那(日本)
松本麻佑/永原和可那(日本)

第2ゲームに入ると、松本/永原は、スピードに慣れ始めた韓国ペアに攻撃のテンポを上げられてしまい、我慢の展開となる。松本/永原は自分たちのミスから4連続失点で3-5と初めてリードを許してしまう。何とか立て直したい松本/永原だが、韓国ペアの堅守の前に持ち味の攻撃力を封じられてしまう。一方、韓国ペアは流れるようなローテーションから連続攻撃を仕掛け、完全にペースを握る。「相手がどんどん攻撃のスタイルで来たときに、自分たちのレシーブでしのぎ切れなかった」と松本が語ったように、中盤以降、韓国ペアの一方的な展開になり、13-21で第2ゲームを落としてしまう。

ファイナルゲームに入っても韓国ペアの猛攻は続き、松本永原は防戦一方となる。松本/永原も必死に反撃を試みるが、点差を詰めることができない。韓国ペアのドライブから前へ詰めてくるパターンに松本/永原はレシーブに精彩を欠き、結局は10-21でこのゲームも落とし、2019年以来の決勝進出を逃した。

試合後、松本/永原は、「日本の皆さんの前に試合ができたのがうれしかった。もう少し見ごたえのある試合ができたらよかったが、応援のおかげで頑張れた。」と会場に詰めたファンに感謝を口にし、「一戦一戦良いパフォーマンスを発揮できるようにしていきたい。どんどんスキルアップできるようにこれから意識を高くもってやっていきたい」と次に向けて語った。


混合ダブルス
大きな成長を見せたワタガシペア、トップペアにストレート勝ちで初制覇に王手

渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY) 2(21-18、21-17)0 ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国)

渡辺勇大/東野有紗(日本)
渡辺勇大/東野有紗(日本)

今大会、集中力と修正力を存分に発揮している世界ランキング2位の渡辺勇大/東野有紗が本日最後の試合に登場した。準決勝で2人に立ちはだかるのは、この5年間、世界ランキング1位がほぼ指定席となっている中国のジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン。昨年のジャパンオープンでも同じく準決勝で対戦し、渡辺/東野がファイナルゲームで制している。混合ダブルス最高のカードに、試合前から観客は盛り上がりを見せた。

第1ゲーム、序盤からトップを争う両ペアらしいスピーディーで迫力あるラリーが次々に展開され、互いに点を取り合う。中国ペアは、ジェン・シーウェイが強いフィジカルを活かしてあらゆる体勢から強打を打ち込み、ファン・ヤチョンが自身のテリトリーでは確実に球を沈める王道スタイルでシャトルをコートに突き刺す。対して、互いにカバーしあってシャトルを拾い、渡辺の緩急を交えたショットを効果的に使いながら、2人でタッチを早めて攻め込む渡辺/東野。ラリーごとに両ペアの持ち味が発揮され、攻守が目まぐるしく入れ替わる。ゲームが動いたのは折り返し後、サイドの配球をうまく使った渡辺/東野が先行し、16-12とする。このあと中国ペアがギアをあげて、より厳しいショットを繰り出すが、東野が果敢な飛び出しを見せてネット前で球を抑え込み、自ら決めて終盤の4得点を生み出し、21-18とした渡辺/東野がこのゲームを奪う。

ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国)
ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国)

第2ゲームも前半は随所に互いの好プレーにより、点を取り合って互角の展開となる。前ゲーム以上に力の籠ったスマッシュを連打するジェン・シーウェイだが、「昨日までよりもしっかりレシーブをコントロールできた」という東野を簡単には打ち破れない。競り合う中で、よくコミュニケーションをとって自信を深めていった渡辺/東野。15-16の場面で後ろに下げられた東野のスマッシュ連打からチャンス球を作って渡辺が決めると、ここから素晴らしい集中力を見せて躍動し、ピンポイントのコースにスマッシュ、ドライブを決めて抜け出す。最後は東野が前衛で素晴らしい反応を見せて球を沈め、21-17で嬉しい勝利を掴んだ。渡辺/東野がこの対戦でストレート勝利を掴んだのは4年ぶり2度目。決勝戦行きを決めた嬉しさと相まって、勝利の瞬間には、渡辺の大きなガッツポーズに加え、東野もコートに横たわって大きな喜びを表した。

明日の決勝戦は、昨年と同じカードが実現する。昨年はもう一歩のところで苦汁を嘗めた渡辺/東野は、「1年越しのリベンジ、そしてジャパンオープン初優勝を狙う」と力強く意思を示した。

激戦を制したタイペアが連覇を目指し決勝へ

デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ) 2(21-10、19-21、21-19)1 フェン・ヤンゼ/ファン・ドンピン(中国)

デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)
デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)

1月のインドネシアマスターズで優勝した中国のフェン・ヤンゼ/ファン・ドンピンと、昨年のジャパンオープンで優勝し、連覇を狙うタイのデチャポン/サプシリーが対戦した。

第1ゲーム、序盤はデチャポン/サプシリーがペースを握った。1ラリーの間に攻守が激しく入れ替わる攻防が続くが、得意な速い展開で得点を重ね、15-4とリードを奪う。対する中国ペアはフェン・ヤンゼの長身から繰り出すスマッシュで得点するが、デチャポン/サプシリーの勢いは止まらず21-10で第1ゲームを先取する。

フェン・ヤンゼ/ファン・ドンピン(中国)
フェン・ヤンゼ/ファン・ドンピン(中国)

続く第2ゲーム、後がない中国ペアは猛攻を仕掛ける。フェン・ヤンゼの強烈なスマッシュに加え、ファン・ドンピンのネット前の捌きも冴えを見せ、10-6までリードするが、デチャポン/サプシリーも必死に食らいつき、19-19で追いつく。最後は観客の声援も後押しし、フェン・ヤンゼ/ファン・ドンピンが21-19で取り返し、勝負はファイナルゲームへ。

ファイナルゲームも前半は動きのいいフェン・ヤンゼ/ファン・ドンピンのペース。前半を11-6で折り返したが、デチャポン/サプシリーも相手の猛攻に耐えながら得意の低空戦で得点を重ね、ついに14-14で追いつく。一進一退の攻防はお互い最後まで一歩も譲らない展開だったが、最後はデチャポンのプッシュで締めくくり、21-19で第3ゲームを獲得したデチャポン/サプシリーが勝利した。

73分の激戦を制したタイペアは、「今日はタフなゲームだった。明日の相手はどちらであろうと自分のベストを尽くすだけ」と語った。

©NipponBA2023 / PHOTO:t.KITAGAWA