試合レポート 大会6日目

7/30(金)各種目決勝

男子シングルス
帝王の証明、豪快さと堅実さを兼ね備えたプレーでアクセルセンが2度目のジャパンオープン制覇

ビクター・アクセルセン(デンマーク) 2(21-7、21-18)0 ヨナタン・クリスティ(インドネシア)

ビクター・アクセルセン(デンマーク)
ビクター・アクセルセン(デンマーク)

世界ランキングで2位以下をポイントで大きく突き放してトップを走り、求道者として真摯にプレーを磨き続ける帝王、ビクター・アクセルセンが威風堂々と決勝戦に登場。対するは1月のインドネシアマスターズ以来の今季2勝目を狙う世界ランキング9位ヨナタン・クリスティ。ダイハツジャパンオープン2023のラストを飾る男子シングルス、スーパープレーヤー同士の頂上対決に会場中から熱視線が集まった。

ヨナタンを応援する大きなインドネシアコールが響く中で始まった第1ゲーム、観客の度肝を抜くまさかの一方的な展開が繰り広げられる。アクセルセンが強力なスマッシュを相手ボディに決めて最初の点を取ると、異次元の安定感と鋭いショットの嵐で全く相手を寄せ付けず13連続得点をあげ、完全にペースを掌握する。低い展開で崩しにかかったヨナタンであったが、反応よくハイクオリテイなショットで対応したアクセルセンが上回る。終始ゲームを支配したアクセルセンが最後もフォアのストレートスマッシュを決め、21-7で颯爽と奪う。

ヨナタン・クリスティ(インドネシア)
ヨナタン・クリスティ(インドネシア)

第2ゲームに入ると、「簡単にどうにかできる相手ではないので、とにかく1つ1つのポイントをしっかりとる意識でプレーした」というヨナタンが、序盤からトップスピードで逆襲を試みる。鋭いクリアを効果的に放って相手をリアコートに押し込み、早いリターンにも果敢に飛びついてスマッシュを放ち、猛烈なチャージでネット前のタッチを早めるなど、アグレッシブなプレーで6連続得点を奪って8-4とリードを奪う。「ヨナタンとの試合はタフなものになることが多いので、覚悟して自分から攻めていくようにした」というアクセルセンは、スピードラリーにも脚を動かして対応し、厳しいリターンを続け、好機と見るや瞬時に上に跳んで角度ある弾丸のようなスマッシュを突き刺す。13-13で追いつくと、ハイレベルラリーが展開され、一進一退の攻防が続く。17-17の場面、ヨナタンが猛攻ののちに見送ったロブショットがオンラインとなると、ここを勝負所と見たアクセルセンがプッシュ、スマッシュを沈めて抜け出す。最後はヨナタンのヘアピンがネットにかかり、21-18としたアクセルセンが帝王の強さを存分に見せつけ6年ぶりのジャパンオープン制覇を果たした。

ビクター・アクセルセン(デンマーク)、ヨナタン・クリスティ(インドネシア)

優勝記者会見でアクセルセンは「すごく素敵な雰囲気の中で試合が出来た。第2ゲームは少しプレッシャーを感じたけど、大事なメンタル面で壁を乗り越えることができたことで、トーナメントの優勝ができたと思う。」と大会を振り返った。また、今後の戦いについて展望を聞かれると「この先近い大きな目標としては、8月の世界選手権。母国デンマークの開催なので、しっかり整えて臨みたい。でもその前に、今晩は美味しいお寿司を楽しみたいです」と話した。今後も強いアクセルセンから目が離せない。

一方、準優勝となったヨナタンは「決勝戦まで戦えたことは嬉しく思う。この先としては、まだ8月の世界選手権でどうこうまでは考えられないので、まずは来週のオーストラリアオープンに焦点をあてて、またいいプレーが出来るようにしたい。皆さん、最後まで応援ありがとうございました」と、こちらも競技者にふさわしい真摯なコメントを残してくれた。

女子シングルス
絶好調のアン・セヨンが圧巻の試合で今季7勝目。

アン・セヨン(韓国) 2(21-15、21-11)0 へ・ビンジャオ(中国)

アン・セヨン(韓国)
アン・セヨン(韓国)

今年の決勝戦は、2016年以来2度目のジャパンオープン優勝を目指すへ・ビンジャオと、今季ここまでトーナメント6勝を上げ、本大会もここまで1ゲームも落とすことなく決勝戦まで勝ち上がってきたアン・セヨンの対決となった。

第1ゲームの序盤は静かな立ち上がりで点の取り合いとなった。両者とも相手を前後左右に揺さぶる巧みなショットで互いにミスを誘い、アン・セヨンがやや先行し11-8で折り返す。後半も交互に点数を上げるが、徐々にアン・セヨンのペースになる。へ・ビンジャオは逆転を目指しスピードを上げるが、それに対しアン・セヨンはミスすることなく正確なショットで相手を追い詰めていく。21-15でアン・セヨンが1ゲーム目を奪取した。

へ・ビンジャオ(中国)
へ・ビンジャオ(中国)

第2ゲームになると、アン・セヨンは素早いタッチで相手の取りづらいコースを的確に突いていく。へ・ビンジャオはリスクを取って厳しいコースを攻めるが、鉄壁のアン・セヨンは全く付け入る隙を与えず、点差を縮めさせない。すべてが洗練されたプレーで、攻守で圧倒的な強さを見せたアン・セヨンが21-11としてジャパンオープン初優勝を果たした。

アン・セヨン(韓国)、へ・ビンジャオ(中国)

今季7勝目を上げたアン・セヨンは、「大変な瞬間はあったが、それを乗り越えられて嬉しい。この大会の優勝で世界ランキング1位が確定する中、トップに立つことはずっと夢だったので、今は実感がわいてきている。まだ21歳の若さなので、オープン大会では勝っているが、世界選手権など大きな大会の経験はまだ足りない。今後もしっかり経験を積み重ねて戦っていきたい。」と語った。

一方惜しくも準優勝となったへ・ビンジャオは、「ラリーで対抗できている時もあったが、たくさん足りない点やよくない点があった。世界選手権やアジア競技大会に向けては、きちんと試合を振り返り、練習した上で臨みたい。」と今後の意気込みを見せた。

男子ダブルス
大舞台の夢よ再び、金メダリストペアのリー・ヤン/ワン・チーリンが東京で再びのV

リー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ) 2(21-19、21-13)0 保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)

リー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ)
リー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ)

日本のエースダブルスである保木卓朗/小林優吾が、待望のジャパンオープン決勝戦に登場した。東京オリンピック金メダリストのリー・ヤン/ワン・チーリンと栄冠をかけて対決した。

小林が鋭いドライブをお見舞いして幕を開けた第1ゲーム、序盤から攻勢を多く作って得点を重ねたのはチャイニーズ・タイペイペア。大きな展開ではワン・チーリンが気迫ある強打の連発を苦にせず攻撃の要を担い、低い展開ではリー・ヤンが素早くシャトルにアプローチしてことごとく球を沈めていき12-7とリードを奪う。保木/小林はディフェンスで上手く切り返し、保木がコースよく打ちこんでミドルコートに球を上げさせては、小林が確実に強力なスマッシュを突き刺していき、19-19でついに捉える。しかし、もう一歩反撃が足りず、最後は保木のネットショットがサイドラインを割ってしまい、19-21で落とす。

保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)
保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)

第2ゲーム、序盤は互いに点を取り合うが、「(長身選手特有のリーチを活かした)サービス回りの速いタッチに対応しきれなかった(保木)」というように、早い手数で相手に攻め切られてしまう場面が増えてしまい、7点を過ぎて以降はチャイニーズ・タイペイの抜け出しを許してしまう。攻撃パターンを確立して勢いに乗る相手の猛攻に、流れを引き戻すことが出来ず、13-21で敗戦となった。2年前のオリンピックに続き、再び東京で栄冠を掴んだチャイニーズ・タイペイペア、ワン・チーリンが膝をついて雄たけびをあげ、リー・ヤンはコート内外を走り回ってその喜びを表した。

リー・ヤン/ワン・チーリン(チャイニーズ・タイペイ)、保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)

優勝したリー・ヤン/ワン・チーリンは試合後の優勝記者会見で、「(ワン・チーリンの)怪我も治り、苦しい期間も経てコンビネーションが向上したと思う。」とペアとしての成長を語った。連覇の権利があるパリオリンピックについて聞かれると「出場権を取るためにももっと上げていかないといけにない。チャイニーズ・タイペイの代表として出られるように頑張っていきたい」と話し、腰を据えて目標設定をしていく様子が伺えた。

女子ダブルス
大好きな日本で2019年以来、2度目の栄冠!

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国) 2(21-17、21-14)0チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)
キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)

最終日のオープニングゲームとなったこの試合、世界ランキング1位のチェン・チンチェン/ジア・イーファンと世界ランキング3位のキム・ソヨン/コン・ヒヨンが対戦した。先週行われた韓国オープン決勝と同じ顔合わせ、そこではファイナルゲームで中国ペアに軍配、韓国ペアはリベンジに燃える。昨日の準決勝で、中国ペアは福島由紀/廣田彩花(丸杉)を攻撃力で、韓国ペアは堅いレシーブで松本麻佑/永原和可那(北都銀行)を下しており、どのような展開になるか注目が集まった。

第1ゲーム、お互いに点を取り合うも、レシーブの冴えが増していく韓国ペアは強打をことごとくリターンするだけでなく、中国のお株を奪うような猛攻で7連続ポイントを奪い、12-5と主導権を握る。「中国ペアは攻撃が強いので、先回りして攻撃した」という韓国ペアは、中国の猛攻を巧みなゲームメイクで抑え込み、20-12でゲームポイントを握る。そこから意地を見せたい中国ペアは、5連続ポイントを奪うものの、最後はキム・ソヨンが前衛で沈めて21-17とする。

チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)
チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)

第2ゲームに入ると、これまでのうっ憤を晴らすかのようにジア・イーファンが後衛からスマッシュを決めて先行する。中国ペアが得意のアタック力を爆発させるかと思われたが、韓国ペアは、スピードと集中力を高めてミスのないラリーでじわりじわりと点差を詰めてプレッシャーを与えていく。3連続ポイントで12-13中国ペアリードの勝負ところで、チェン・チンチェンがサービスをネットにかけてしまう。そこから韓国ペアは、サービスリターンにコン・ヒヨンが素早く反応して前衛で沈め、続くサービスでエース(チェン・チンチェンが見送る)と15-13と流れを握る。「自分たちのパフォーマンスは十分発揮できたが、自分たちのミスが多かった」と振り返った中国ペアにミスが出て、韓国ペアが6連続ポイントを奪い、21-14として、2度目の優勝を果たした。「日本が大好き」という二人は抱き合って、喜びを分かち合った。

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)、チェン・チンチェン/ジア・イーファン(中国)

試合後、キム・ソヨン/コン・ヒヨンは、「4年ぶりに優勝できてすごく嬉しい。先週も同じ相手と試合して負けていたので今回は勝ててすごく嬉しいです」と笑顔で話した。また、キム・ソヨンは、「オリンピックレースをいい位置で突破するのが1番の目標。それに向けてがんばりたい」と話せば、「最終目的はオリンピック優勝。2人の呼吸を合わせるのが重要。トーナメントを戦ったり練習をしていく中で、地道に実力をつけていきたい」と力強く語った。

混合ダブルス
コミュニケーションと信頼で掴んだ勝利。渡辺/東野がこの種目で日本勢初優勝を果たす。

渡辺勇大/東野有紗(BIPROBY) 2(17-21、21-16、21-15)1 デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)

渡辺勇大/東野有紗(日本)
渡辺勇大/東野有紗(日本)

’18全英オープンでの優勝を皮切りに日本のミックスダブルスの歴史を次々と塗り替えてきた渡辺勇大/東野有紗は、世界ランキング3位のタイの強豪、デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイと決勝で対戦。この種目の優勝をかけた戦いは、昨年と同じ顔ぶれとなった。渡辺/東野はお互いの積極的な声掛けで連携を深め、準決勝で世界ランキング1位のペアをストレートで退けている。「今年は優勝できるように頑張りたい(東野)」と述べているだけに、この種目で日本勢初優勝を飾れるか、興味深い戦いとなった。

第1ゲーム序盤、抜け出したのは渡辺/東野だった。渡辺が後衛で縦横無尽に駆け回りながら広くコートをカバーしノーロブのラリーを展開すれば、東野は前衛で果敢に前へ詰めプレッシャーをかけ相手のレシーブミスを誘っていく。中盤までは11-5と大きくリードを広げこのまま流れで進むと思われたが、ここからタイペアの攻撃が目を覚ます。渡辺の後衛からのつなぎや東野のネット際の球に対してタイペアがテンポ良く攻め込む。またデチャポンに高い跳躍から強力なスマッシュを打ち込まれると、15-14と逆転を許してしまう。流れを変えたい渡辺/東野であったが、タイペアの攻撃が東野に集中し決められるラリーが増え17-21でこのゲームを落としてしまう。

デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)
デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)

第2ゲームに入ると序盤から再び渡辺/東野がペースを掴む。「東野の前衛でのタッチにはとても助かった」と渡辺が語ったように東野がサーブ周りで上から積極的に落としにかかると、甘く上がった返球を渡辺が決める。また、渡辺は広い視野を生かしてノータッチショットを何度も決めて14-6とリードを広げる。しかしこの状況でもタイペアはしぶとかった。タイペアはさらにスピードを上げ前に詰めると、渡辺/東野はネットミスが続き16-15の1点差まで詰め寄られてしまう。1ゲーム後半と同じような悪い流れかと思われたが、「前を信頼して上でさわれることができた。ずっとお互いに声をかけあって気持ちをきらさなかった。」と渡辺が振り返るように、対応力の高さでミスがなくなり、21-16で第2ゲームを奪い返す。

渡辺勇大/東野有紗(日本)、デチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)

運命を決めるファイナルゲームはまず、先手を取りに積極的に前に詰めてくるタイペアに対して、渡辺/東野は相手の動きをしっかり見極め、空いたスペースにコントロールされたショットを打ち込む。これでペースを掴むと、渡辺の後衛から緩急をつけた攻撃でタイペアを翻弄。10-9から5連続ポイントを奪い、突き放すと安定した戦いぶりを見せ21-16で勝利。渡辺は「歴史を作るぞという思いで試合に臨んだ」だけに、二人は全身で喜びを表現し大観衆の声援に応えた。

試合後、渡辺は「去年の借りを返すことができたので嬉しい」と語り、今大会の収穫としては「コミュニケーションをとることでお互いがお互いの仕事をすることができた」と述べた。今後の展望については「1つずつ、目の前の試合に勝つことを考える」と口をそろえた二人は、これからもお互いを信頼してさらなる高みへ突き進む。

©NipponBA2023 / PHOTO:t.KITAGAWA